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ハワイの島は、どうして一列に並んでいるのでしょうか。

ちーがくんとはかせと一緒に、探査装置「はかせ号」で、ハワイの空の上から海の底の下まで探検してみましょう!

封筒のハンコと、ハワイの島々の写真

―夕方。研究室の机で、ちーがくんは、はかせの手紙の封筒に、ぽん、ぽんとハンコを押すお手伝いをしています。

ちーがくん
ちーがくん
ぽん、ぽん、ぽん! 封筒を少しずつずらして押したら、跡がきれいに一列に並びましたよ!
少しずつずらして重ねた封筒の上に、赤い丸のハンコの跡が4つ、横一列に並んでいる図。上にハンコがあり、「同じ場所で、ぽん。封筒をずらして、ぽん。」と書いてある
はかせ
はかせ
おお、きれいに並んだのう。……そうじゃ、封筒のとなりに、写真を置いてあるじゃろう。人工衛星が宇宙から写した、太平洋のまん中にある、ハワイの島々の写真じゃ。島の並び方に、何か気づくことはないかの?
人工衛星から写したハワイの島々の写真。暗い青の海に、緑や茶色の島が、左上から右下へななめに並んでいる。写真の下に「ハワイの島々(人工衛星から。2003年5月)」「画像: NASA(MODIS Land Rapid Response Team, NASA GSFC)/パブリックドメイン」と書いてある

ハワイの島は、なぜ一列に並んでいる?

ちーがくん
ちーがくん
あっ、ハワイの島って、ななめに一列に並んでます! どの島も、火山の島なんですよね? 島は動かないから、島の下にそれぞれマグマがあって、みんな同じころにできたのかな。どうして、こんなにきれいに一列なんでしょう?
はかせ
はかせ
うむ、よい問いじゃ。マグマというのは、地下で岩がとけたものでな、ハワイの島は、どれも火山が海の底から育ってできた島じゃ。……ちーがくんの考えが合っておるかどうかは、はかせ号で確かめられるぞ。

はかせ号で、ハワイへ

ちーがくん
ちーがくん
やった! 島がみんな同じころにできたのか、この目で確かめたいです!
はかせ
はかせ
うむ、その考えを、確かめに行こう。じゃがその前に、まず今のハワイを、空の上から見てみよう。……それでは、はかせ号、出発じゃ!

今のハワイの空の上 ―― 島の札の年を読む

―はかせ号がまばゆい光に包まれました。光がおさまると、窓の下いっぱいに、青い海が広がっています。その海に、島が点々と並んでいました。

ちーがくん
ちーがくん
うわあ、海がまぶしい! 真っ青です! 島が、ずらっと一列に並んでます! ……あれっ、島の上に、札が浮かんでますよ!
はかせ
はかせ
ここが、今のハワイの空の上じゃ。島の形がよく分かるよう、はかせ号の窓は、島の高さを5倍に引きのばして映しておるぞ。札の年は、その島の火山の岩を測って分かった年じゃ。火山がいくつもある島は、古いほうの火山の年を出しておる。
ちーがくん
ちーがくん
ええと、窓の左はしのカウアイ島が約510万年前で、右はしのハワイ島が約43万年前……あっ!? 右へ行くほど、数字が小さくなってます! 同じころじゃないです!
青い海に、島が左から右へ一列に並んでいる。島の上の札には、左から「カウアイ島 岩の年代 約510万年前」「オアフ島 岩の年代 約370万年前」「モロカイ島 岩の年代 約190万年前」「マウイ島 岩の年代 約130万年前」「ハワイ島 岩の年代 約43万年前」とある。右はしのハワイ島の山だけが、赤く光っている。画面の計器に「時代 今」と出ている
はかせ
はかせ
うむ、そこじゃ、ちーがくん。左が北西、右が南東でな、北西の島ほど、だいたい岩の年代が古い。ハワイ島の札は、北の端の火山の岩の年で、南の火山では、今も新しい岩ができておるぞ。それぞれの島ができはじめたのは、その島の札の年よりも前じゃ。
ちーがくん
ちーがくん
みんな同じころにできたんじゃなかったんだ! ……はかせ、右はしのハワイ島の山だけ、赤く光ってます!
はかせ
はかせ
うむ、そこも大事なところじゃ。赤く光らせておるのは、盛んに噴火して島を大きくしておる時期の火山じゃ。いつも噴火しておるわけではないし、光っておらん火山も、ときどき噴火することはあるぞ。今その時期にあるのは、南東の端の、ハワイ島の、いくつかの火山だけなんじゃ。その南東の沖の海の底でも、次の火山が育っておるがの。
ちーがくん
ちーがくん
古い島は北西で、今さかんな火山は南東の端……。はかせ、どうして、こんな並びになるんですか?
はかせ
はかせ
うむ、そこが今日の謎じゃ。地球の表面は、プレートという岩の板が何枚も組み合わさって、おおっておる。火山の噴火の多くは、その板と板の境目のあたりで起きるんじゃが、ハワイは、いちばん近い境目からでも3200キロ以上離れた、板の内側にある。……ちーがくん、どうしてだと思う? 島ができたころへ戻って、一緒に確かめよう。

約370万年前の同じ場所へ ―― 時間を早く進めて見る

―光がおさまると、同じ空の上でした。けれど、窓の下の島の数が、さっきよりずっと少なくなっています。

ちーがくん
ちーがくん
あれっ、島が少ないです! ハワイ島がありません! 真下の海で、火山がひとつ、赤く光ってます! 黄色い輪っかも浮かんでますよ!
はかせ
はかせ
ここは約370万年前の、同じ場所の空の上じゃ。真下で光っておるのは、のちにオアフ島の西側になる火山じゃ。黄色い輪は、はかせ号の真下を示す目印じゃ。はかせ号は、緯度と経度 ―― 地球の上の位置を表す目もり ―― の同じ場所に、止まっておるぞ。
島の少ない海。海の底の火山がひとつ赤く光り、そのまわりを黄色い輪が囲んでいる。札に「この火山 目印から 0 km」とある。左には島が2つ見える。画面の計器に「時代 約370万年前」と出ている
ちーがくん
ちーがくん
じゃあ、この火山は、これからもずっとここで噴火して、オアフ島になるんですね! 島は動かないから、目印の真下にあるままのはずです!
はかせ
はかせ
うむ、その考えを持ったまま、見てみよう。はかせ号で、時間を早く進めるぞ。本当は、目ではとても分からんほど、ゆっくりした動きじゃ。目印の輪と、札の数字と、年代メーターを見ておこう。年代メーターの年は、岩の年代から大まかに合わせたもので、ぴったりではないぞ。
ちーがくん
ちーがくん
うわあっ!? 火山が、輪っかの外へ出ていきます! 札の数字が、25キロ、35キロ、45キロ……どんどん増えてます! 目印は動いてないのに、火山のほうが、左へ動いてる!
赤く光る火山が、黄色い輪の左へずれて出ている。札は「この火山 目印から 75 km」。黄色い輪の中には、まだ島が無い。画面の計器に「時代 約300万年前」と出ている
はかせ
はかせ
うむ、動いておるのは火山のほうじゃ! 海の底の岩の板ごと、北西へ運ばれておる。……見てごらん、目印から離れた火山の赤い光が消えて、目印のあたりの海の底で生まれた次の火山が、育って、光りはじめておるぞ。
ちーがくん
ちーがくん
ほんとだ! あっ、その次の火山も! 新しい火山が光りはじめるのは、いつも目印のあたりです!
はかせ
はかせ
そこなんじゃ、ちーがくん。そして火山は、育ちながら北西へ運ばれ、目印から離れると、やがて大きな噴火が止まる。……さあ、今の時代まで、一気に進めるぞ。
ちーがくん
ちーがくん
わあ、次から次へと、目印のところで火山が光って、北西へ運ばれていきます! 島が、一列に並んでいく! ……あっ、年代メーターが、もうすぐ今です!
黄色い輪のところから左へ、島がつながって並び、いくつかの山が赤く光っている。画面の計器に「時代 約160万年前」と出ている
はかせ
はかせ
わしらは今、この目で見たな。新しい火山が盛んに噴火しはじめる場所は、いつも、緯度と経度でほとんど同じ場所で、火山も島も、北西へ動いていった。人間は過去を見に行けんが、島の岩の年代の並びから、同じことを考えた ―― マグマを生んでおる場所は、ほとんど同じ所にとどまっておる、とな。この場所を、ホットスポット ―― 『熱い場所』と呼ぶんじゃ。そこに何があるのかは、あとで見せよう。
今のハワイの島々。島の上に年代の札が並び、右はしのハワイ島の赤く光る所を黄色い輪が囲んで、「ホットスポット」という札が付いている。画面の計器に「時代 今」と出ている
ちーがくん
ちーがくん
ホットスポット! 動いてたのは、島のほうだったんですね! 島は動かないって、思ってました! あっ、出かける前のハンコと同じだ! ハンコは同じ場所で押して、封筒のほうをずらしたから、跡が一列に並んだんです!
はかせ
はかせ
おお、ハンコとつながったか! 同じ場所で押して、紙のほうが動く ―― そこが同じじゃ。ここでは、押すかわりに、マグマが下から上がってきて、跡が火山になるんじゃ。ハンコは一瞬で押すが、火山は長い時間をかけて育ち、育つあいだも少しずつ運ばれていく。島は、紙の上の跡とちがって、岩の板の一部なんじゃ。
ちーがくん
ちーがくん
下から、ゆっくりできていく跡なんですね! でも、はかせ、岩の板って、今も動いてるんですか?
はかせ
はかせ
うむ、ハワイの島は、太平洋プレートという岩の板の一部で、板ごと動いておる。人間も、人工衛星を使って、この板が動いておるのを測っておる。今は北西へ、年に数センチから10センチほどと見積もられておるぞ。島の年代の並びと、板が動いておることを合わせて、うまく説明できるのが、ホットスポットがほとんど同じ所にとどまっておる、という考えなんじゃ。
ちーがくん
ちーがくん
そうなんですね! でも、はかせ、『ほとんど』って、ぴったり同じじゃないんですか?
はかせ
はかせ
うむ、ぴったりではないんじゃ。世界のあちこちにあるホットスポットは、互いに少しずつ位置を変えておるようじゃし、ずっと昔には、このホットスポットが南へ大きく動いていた時期もあったようじゃ。……さて、ホットスポットに何があるのか、見に行こう。

ホットスポットの下へ

―はかせ号は海の底をくぐり、そのさらに下の、岩の中へと進んでいきました。窓の外に、地下の様子が広がっています。

ちーがくん
ちーがくん
わっ、海の底の下が見えます! 下のほうに、オレンジ色の太い帯があります! 帯の上のはしに、赤い点々もあります!
はかせ
はかせ
ここが、ホットスポットの下じゃ。はかせ号の窓は、まわりより熱い岩を、オレンジ色に映しておる。のぼってくるのは、とけた岩の流れではなく、この熱い岩なんじゃ。人間はここへは来られんが、地震の波の伝わり方などから、熱い岩がのぼってきて、その一部がとけておると考えておるぞ。
ちーがくん
ちーがくん
えっ、とけた岩じゃないんですか!? じゃあ、赤い点々のところは、何ですか?
はかせ
はかせ
よい問いじゃ、赤い点々のところがマグマじゃ。深いところの岩は、熱くても、大きな圧力がかかっておって、とけにくい。のぼってきて、圧力が下がると、その一部がとけてマグマになるんじゃ。そのマグマが上がってきて、ホットスポットの近くの火山で噴き出す。赤い線は、上がっていくことを示す、はかせ号のしるしじゃ。
地下の断面。上に海と島の山、その下に岩の層がある。下の暗い岩の中を、オレンジ色の太い帯が下から上へのびていて、「まわりより熱い岩」と札が付いている。帯の上のはしに赤い点々があり、「マグマ」と札が付いている。そこから赤い線が、上の島の山へのびている
ちーがくん
ちーがくん
のぼってくるのは熱い岩で、のぼってくるうちに、その一部だけがとけて、マグマになる……。じゃあ、ホットスポットって、マグマのもとになる熱い岩が、下からのぼってくる場所なんですね!
はかせ
はかせ
うむ、よくまとめたな、ちーがくん。そこにあるのは、とけた岩のかたまりではない。下から熱い岩がのぼってきて、その一部がとけてマグマができる所じゃ。……ただ、この熱い岩が、地球のどこまで深くから来ておるのかは、まだ分かっておらん。議論が続いておるのじゃ。

今のハワイに戻って、島の色と形を見る

―はかせ号が海の上へ戻ると、窓の下に、今のハワイの島々が広がっていました。

ちーがくん
ちーがくん
今のハワイです! ……あっ、はかせ、島の色と形がちがいます! 北西の島は緑色で、山に谷が刻まれてます! 南東のハワイ島は、茶色くて、谷が目立ちません!
はかせ
はかせ
うむ、わしもそこに目がいく。ホットスポットから離れて、大きな噴火が止まった火山は、もう育たん。そのあとは、長い時間をかけて削られて、谷が刻まれていくんじゃ。本物の島の色や谷は、場所によってさまざまじゃから、ここでは、ちがいが見分けやすいよう、はかせ号の窓が大まかに色分けして映しておるぞ。
今のハワイの島々を、海の上から見たところ。左の島は緑がかった色で、右はしのハワイ島は茶色い。ハワイ島の赤く光る所を黄色い輪が囲み、「ホットスポット」という札が付いている。画面の計器に「時代 今」と出ている
ちーがくん
ちーがくん
じゃあ、火山が大きくなれるのは、ホットスポットの近くにいるあいだだけなんですね! 離れちゃうと、もう大きくならないんだ!
はかせ
はかせ
そのとおりじゃ、よく言えたな。火山が育つのは、ホットスポットの近くにいるあいだだけじゃったな。近くにおるあいだは、マグマがよく届くから、と考えられておる。離れたあとの島でも、小さな噴火が起きることはあるがの。

研究室に戻って、ちーがくんのまとめ

―研究室に戻ると、机の上には、ハンコを押した封筒とハワイの島々の写真が、出かける前のまま並んでいました。

ちーがくん
ちーがくん
はかせ、今日見たこと、僕の言葉でまとめますね! まず、ハワイの島は、同じころにできたんじゃなくて、岩の年代は北西の島ほど古かったです! それに、動かないと思ってた島のほうが、動いてました!
はかせ
はかせ
うむ、その2つじゃな。岩の年代は、北西の島ほど古い、というのが大まかな並びじゃった。そして島は、太平洋プレートという岩の板の一部で、板ごと北西へ動いておった。……さあ、ここからが、一列に並ぶわけの肝心なところじゃ。
ちーがくん
ちーがくん
マグマのもとは、ほとんど同じ場所にあって、その上を、島ごと海の底の岩の板が、年に何センチかずつ北西へ動いていくんだ。紙をずらしながら、動かないハンコを押していくと、跡が一列に並ぶみたいに、ハワイの島も、北西の島ほど古くなるように、だいたい一列に並んでるんですね!
はかせ
はかせ
うむ、そのとおりじゃ。出かける前のハンコが、ここまで連れてきてくれたな。ハワイでは、押すかわりに、マグマが下から上がってきて、跡が火山になる。一瞬ではなく、長い時間をかけて育ち、育つあいだも少しずつ運ばれていく。そして島は、紙の上の跡とちがって、岩の板の一部じゃよ。
ちーがくん
ちーがくん
下からゆっくりできていく、火山の跡ですね! それに、ホットスポットは『ほとんど』動かない、でしたよね!
はかせ
はかせ
うむ、ほとんど、じゃ。まったく動かんわけではない。それから、ホットスポットにあるのは、とけた岩のかたまりではなく、下から熱い岩がのぼってきて、その一部がとけてマグマができる所じゃったな。

もう一度、ハンコを押す

―ちーがくんは、封筒を少しずらして、ぽん、とハンコを押しました。並んでいく跡の向こうに、写真の島々が見えます。出かける前は、ただの点の並びだったそれが、今は、海の底の岩の板が動いてきた、長い長い時間の跡に見えるのでした。